ハート空っぽ




あぁ、アンタか。来たからには何か買ってくんだろうな?・・・・煎餅?貰っとくよ、あんがとさん。
パルスィに煙草を買って来てもらおう。

前に勇儀とその友達が二人で遊びにきたよ。勇儀は友達にニット帽をプレゼントしたみたいだね。
うーん、いい加減ワンパターンだな、新しいのを考えないと。キスメにでも相談してみるか。

えっ?ちょっと、今は面倒くさいから話しかけないで。大事なところなの。
(無心のようだ、ミシンをかけるのに集中している)

ちょっと酒が足りないねえ。萃香を見たら教えてくれよ、分けて貰いに行くからさ。
最近美鈴の奴遊びに来ないじゃないか、あいつなら酒もいけるし喧嘩もできるし、良い肴なのに。

やあやあさとり様、今日も私は死体を運びに行ってきます。
やあやあさとり様、今日も機嫌の良さそうな仏頂面!


あ、さとり様。今暇なんだ、ちょっと遊んでくれたら嬉しいな。
あの塊はなんだったんだろう、私のエネルギーを必要としている匂いがする、私を必要としている匂いがする。


お姉ちゃん、おはよう。お姉ちゃん、今日の朝ごはんは何?お姉ちゃん、いただきます。お姉ちゃん、ごちそうさま。
■■■■・・・・。■■■■、■■■■■■■■■■。(ノイズが多すぎて読めない・・・・)


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そこは何処までも荒廃していて、燃えカスばかりが散乱していて、燃えカスを箱形に固めた謎の物体がたくさん転がっていて、地底の端っこで大きな壁が見えて、上を見上げれば大きな穴から光がさしている、そんな所だった。

「どんどん高くもっと高く〜・・・・♪」

空は今日も仕事で出た燃えカスを固めて箱を作る。

積み上げる。

上る。

まだまだ足りないなぁ、とまた作り始める。

ここ一カ月ほど、お空はこんな感じ。

いつもの仕事はいつものようにこなすけど、他はガラリと変わった。

誰にも見つかった事がない秘密の場所に、気付いたら足が向いていて。

上の穴を目指して箱を作って、積み上げる。

仕事以外はずっとここにいるかもしれない。

だから地底の仲間たちとも仕事の時間以外は話さなくなった。

「鳥にも届く痛みの塔〜・・・・♪」

上からは時々、鉄の塊や鉄のクズや、カラフルな紐のような何かや、変な虫が沢山くっ付いた緑の板や、そんなものが落ちてくる。

時々?しょっちゅうかもしれない。

空としては、好奇心の対象だった。

「そのてっぺんによじのぼって〜・・・・♪」

ある日、でかい塊が降ってきた。
よくわからない形をしている。

すごく使い物にならなそうな壊れ方をしている。

意図的に壊されたような壊れ方をしている。

完膚なきまでに壊れている。

完膚なきまでに壊されている。

なんだろう、マンガで読んだことあるんだよな、あれ。

転送装置みたいな。

あんな感じのがひっついてて、あとはまっさらでまっしろだった。

ひたすら大きかった。

空が30人分ぐらいの高さかも。

空は落ちてきた物を全部燃やしていたので、それもその通りにしようとした。

空の炎はあの『あれ』の破損部分から吸い込まれてしまった。

そのあと、バチバチと音がした。

ようなきがした。

「歌声響く・・・・♪違う、また歌詞忘れちゃった」

お燐が居なくなった。

お燐だけここへこっそり連れてきた。

お燐は面白がって、楽しそうで、喜んでいた。

落ちてきた大きい何かを見せると、お燐はふざけてひっついてる小さいのに入ったりした。

お燐は幸せそうで、満喫してて、笑っていた。

お燐とはいつもにっこり笑っていた。

お燐は居なくなった。

お燐が居なくなったのと引き換えみたいに、まっさらな機械はもっとまっさらに、綺麗になった。

息を吹き返したみたいに綺麗になった。

お燐を生贄にしたみたいに生き返った。

私は怒った。

この『これ』が、お燐を消したんだと思った。

お燐はこの中に入っているんだと思った。

沢山沢山頑張ったけど、とうとうこの『これ』には傷一つつかなかった。

「どんどん高くもっと高く〜・・・・♪」

さとり様はお燐が居なくなってすごく心配した。

こいし様が居なくなって、立て続けの事だった。

一番お燐と仲が良かった私に、何か知らないかと聞いてきた。

私は何も知らないと答えた。

あなたは消えたりしないよね、と聞いてきた。

もちろんですと答えた。

さとり様はそれ以上何も聞いてこなかった。

それから一カ月たった。

いつものように箱を作る私の前に、何故かさとり様が居た。

「お空」

「さとり様」

「何をしているの?」

「・・・・」

さとり様は別に怒っていなかった。

私を怒りに来た訳じゃないみたいだった。

だから正直に答えて見ることにした。

『別に明確な理由があるわけじゃないんです』と伝えようとした。

「上に着けば、きっと何かがどうにかなるんです」

さとり様は目を閉じている。

さとり様はいつも目を閉じている。

さとり様は三つ目の目だけをいつも開けている。

「お空」

さとり様は心が読める。

私が知らないって言ったって、さとり様は全部わかってる。

私の考えを読んで、私の気持ちを汲んで、放っておいてくれたのはわかってる。

明確な理由なんかなくても、明確な気持ちがあったんだと思う。

日に日に私がやつれて、目のくまが濃くなっていくのを見てられなくなったんだろうなあ、というのもわかる、きがする。

「飛べばいいじゃない」

「あ」

さとり様って、頭いいなあ。

おでこが広いから。

眉毛がないから?

それは多分関係ないけど。

さとり様は目を開けた。

さとり様はこっちを向いていた。

さとり様は私の方を見ていなかった。

さとり様は目が見えなかった。

さとり様の目つきは悪かった。

「一度、帰って休みなさい。もうそんな頑張らなくていい事で頑張らなくていいから」

さとり様の目つきは悪かった。

さとり様の顔つきは優しかった。