紅香奇行




トランプだよ。

トランプだな。

そう、トランプだよ。

トランプだな、だからどうしたの?って聞いてるんだよ。

だからトランプで遊ぼうって言ってるんだよ。

うん、いいよ?何をして遊ぶ?

大富豪?

悪い、大富豪は嫌いなんだ。

えっなんで!?

なんか、面倒くさいじゃん。やるたびにルールの確認とか。人の数だけルールがある気さえしてくるゲームだと思わねえ?まるで人間みたいだ。

そりゃ人間が考えたゲームだしねえ。・・・・じゃなくって。ローカルルールが嫌なら八切りと革命だけでやればいいからさ。そんな事言わずにこっち来てよ。

・・・・八切りって何?


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「・・・・スカーレットぉ!」

その日、紅美鈴の機嫌は概ね良好だった。

「あァ・・・・なんだアイツは、いつも同じ所に居る癖に、探すと居なくなりやがる。てめェは消しゴムか!」

虚空に向かって一人ツッコミを入れる彼女。

ちなみにもう一度言うが、この日の紅美鈴の機嫌は概ね良好である。

「うん、うん。『てめェは消しゴムか』ね。確かに消しゴムって言うのは筆箱の中に絶えず入ってるはずなのに、必要になって漁ってみるとなかなか見つからなかったりするよねえ、なかなか面白い比喩表現だと思うよ。ただねえ、私は君の後にずっとついて行っているだけだから、この場合『てめーはメガネか!』とかそういうのもいいんじゃないかと思うんだよねえ。・・・・ところで君は筆箱を持つ習慣なんてあったのかい?学生の経験でも?」

レミリア・スカーレットは人をからかって遊ぶのが大好きな吸血鬼。

「うわッ!どう反応していいかわからねえし、どうツッコんでいいかわかんねえからそォいう現れ方はやめろ!やめろというなら人の台詞を分析して面白いとか言うのもやめろ!」

美鈴の鋭いツッコミ!

「そんな事より君はどうして私を呼んでいたの?」

レミリアは素早く身をかわした!

「ぐゥ・・・・、アレだよアレ、フランとパチュリーさんと小悪魔と咲夜とチルノと私でトランプをやってたんだが、フランが『お姉ちゃんがいないのはなんでだ』とか騒ぎだしたもんでな」

「へぇ、楽しそうだね。ちなみに私がいないのはなんでだったの?」

「聞かなくても解ってるだろ。お前運命操れるからだよ」

「なんでフランにそう言わなかったの?」

「聞かなくても解ってるだろ。言っても聞かねえからだよ」

「O・K。じゃあ私は美鈴について行けば良いわけだな?」

「さっきからついて来てた癖によ。ちなみにいつからつけてきたんだ?」

「君が図書館の部屋を開けた所あたりかな」

「最初からじゃねえか」

最後にもう一度言うが、この日の紅美鈴の機嫌は概ね良好だった。



「まあこうなる事はわかってた(予知夢)」

美鈴が聞き慣れない喋り方でそんな事を言った頃、ゲームに参加してから大富豪にしかならなかったレミリアはトイレに行っていた。

「レミ姉は目を瞑ってたって勝てるからゲームに参加してないのと同じだよ!だから実質の1位は私という事で」

と、ずっと富豪をキープしていたチルノ。

「チルノのその運の良さはなんなの?バカなの?死ぬの?」

と、ずっと平民と貧民を行き来していた小悪魔。

「ちょっとてめえら少しずつ私に運分けろ、ただしチルノはごっそり寄越せ」

と、ずっと大貧民を喰らっていた美鈴。

ぐたぐたと愚痴やら愚痴やらが聞こえてる間に、レミリアが帰ってくる。

「ちょっと、私が呼び集めなくても全員集まってるから丁度いいんじゃないかなあとか思ったんだけど」

「あ?」

レミリアは真面目なんだかふざけてるんだかわからない、そんな真顔でそんな事を言い出した。

「どうしたの?」

パチュリーが聞くと、レミリアは同じ調子で答えた。

「私、明日あたり、どう頑張っても消えちゃうんだけどどう思う?」

「・・・・あ?」

「すごく・・・・突拍子ないです・・・・」

「あとついでに咲夜が瀕死になって、美鈴は失踪しちゃうんだけど、これまたどう思う?」

「・・・・あ?」

「イミフ」



うはおkとレミリアによる詳しい説明。

・明日、何者かによってレミリアは誘拐される。誘拐されるのか殺されるのか、そのあたりは良くわからない。
・咲夜も同じく拉致されそうになるが、そうはならない。その後、病気のような何かで瀕死になる。
・さらにその後、美鈴が失踪する。
・パチュリーと小悪魔はそれなりに怪我をする筈だから気をつけるように。
・フランは殺される可能性が高い。力いっぱい抵抗しなければならない。
・という夢を見た。

「おい待てフザけんな夢かよ」

「ま、夢は冗談なんだけど、もう少し詳しく説明するよ」

・この運命はすでにレミリアの手によって最大限最善に改変された運命である。
・ちなみにレミリアが運命をいじらなかった場合、コーママンションの住人は小悪魔以外生き残らない。その小悪魔も生きていると言うには生きている者に失礼と言うべき状態になってしまう。
・尚、この運命を聞かされたからといってコーママンションの警備を強めることは絶対にしてはならない。

Q.何故、警備を強めるのがいけないのでしょうか。

A.この運命はまず不意打ちを受けなければ、極めて悲惨な状況が幻想郷を襲ってしまう、だから―

Q.まて、幻想郷規模の何かが明日起こるって事か?

A.そうそう、そういう事。でもこれはその序章。プロローグは既に起こってしまっている。それで質問の答えだけど、つまり、順番が狂うと全てが狂うってことなんだよ。私の運命操作っていうのは順番がスゴイ大事なんだ。私が操った運命の通りなら、この異変は無事にハッピーエンドで終わる。だから不意打ちを受ける、と言う順序はまず大前提であると考えてほしい。

Q.そんな大前提があるにも関わらず、私たちにその事実を伝えた理由は?

Q.・・・・つまり、私達にこれを話す事も、順番の内に入るって事じゃないかしら?レミィ。

A.大。正。解。とりあえず明日の『引き金』があるまでは、皆さんどうかお気軽にお気楽に、いつもどおりに過ごして頂きたい。ただし引き金があった後は、全力で本気で、この襲撃に対応してほしい。

「・・・・ちなみに蛇足だけど、明日の襲撃はこれから起こる異変となんの関係も無いとまで言えば言い過ぎだけど、ちょっと触りましたぐらいにしか関係がない。序章にも届かないといっていいだろうね」

「ホントに蛇足だな、やる気がそがれるぜ」

「えっ私は今ここにいるけど、なんの関係もないの?」

ちるの は こんらん している!

「チルノはこの襲撃とは関係ないから、今日中に湖に帰りなさい。というか、帰らなければならない。しかし異変に何の関係もないと言う訳じゃあなく、むしろ今回起きる異変の重要人物の一人になるだろう。他の重要人物が誰なのかは、よくわからない」

「は、ひゃい」

チルノは状況がまったく飲み込めず、返事も若干噛んでしまう。

というか、状況がハッキリ飲み込めているのはレミリアだけだった。