大きい世界




大きい鎌を手で遊びながら、つまらなそうに、しかし退屈ではなさそうな彼女。

手ぶらで、こんな森の中を歩くなんてナメているとしか思えない彼女とともに。

ともすれば自殺でもしにきたのではないか?と心配にすらなる装備だが、

彼女らはそんな事でどうにかなったりはしない。

森をただよう瘴気すら、酸素となんら変わりがない。

「なあ、博麗の巫女って異変解決も仕事のうちだったっけ」

「そうねえ」

「今回の事に傍観決め込むのって、博麗の巫女としてどうなの?」

「そうねえ」

「あ、あー、いやいやいやいや、別に何か文句があるわけじゃないんだけど?」

「んー。私が異変解決した事って、そもそもあったかしら」

「はい?」

「私はいっつも格好だけよ。一応異変解決しますと乗り込んでいくけど、異変の元凶をどうこうするのは大体魔理沙で、魔理沙でなくても他の誰かよ。私じゃなくって」

「・・・・はあ」

「だけど『何かがどうにかなって』、私が解決しましたって事になってるだけ。いつもそんな感じ。私はそのうち考えるのをやめたわ」

「八雲あたりが関係してるのかねえ、まあ、そんな事は今回の異変と関係ないけど」

「・・・・あ、あれが魔理沙の開いているお店ね」

「『年中無業』・・・・なんじゃこりゃ。見るからに生活感がない。どうなってんだろ」

「あぁ、魔理沙は河童の処で寝泊りしてるから。今回は勝手に踏み入って中身を物色するだけよ」

「んん、おーけー、何を探せばいいんだっけ?」

「■■■よ。実はこれも今回の異変とは関係ないんだけど、ね」



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「ホラホラ、そんなものか!?私に本気を出させて見ろ!」

「ぐ・・・・ッ、は、ハッハ、まだまだァ!」

橙はくあ、とあくびをもらした。

「・・・・あれ、なにやっとーと」

声の主は、変哲の無い只の庭での謎の状況に当惑している。

「あぁ、羽根突きっすよ」

「は、羽根突き?私の知っとる羽根突きはもっとほのぼのとした遊びだったはずで、あれは、なんと、私にはヤムチャ視点で・・・・」

八雲紫と八雲藍は羽根突きをしていた。

晩御飯を作るのがどっちかを決めるための羽根突きである。

その勝負は熾烈を極め、2時間程に及んだ所で、早苗は現れた。

「ってわけなんすけど」

ヤムチャとはなんだろう、と橙は考える。

「はあ。なんというかまあ、ばかんこつやってますね。それなら二人で晩御飯作っちょる方が早かろうにと思いますけど」

「二人にしたら只の遊びなんで、気にしたら負けっすよ」

結局、早苗が現れてさらに1時間程度経過したところで、紫が勝利を収めた。



「あぁ、東風谷さんですか。わざわざこんな処まで一体何用でしたか」

汗をかいたのでシャワーを浴びてきた藍に、あきれ調が抜けて普通の喋り方に戻った早苗が答える。

「えー、あの、なんていったらいいのか」

早苗は言葉を探している様な態度をとったが、結局それは大した意味が無かったようで、諦めたようにぶっきらと口にした。

「妖怪の山がなくなりました」

「・・・・んん??」

唐突かつ意味不明な説明に、藍の頭は「あぁ、そうか妖怪の山がなくなったのかー」と素通りしそうになったが、

「それはどういう意味かな」

と、ギリギリ言葉を紡ぐ事に成功した。

「簡単に説明するとですね、神奈子様がブチ切れて妖怪の山を消し炭にしてしまったんです」

「事後じゃないか・・・・起こり終わってしまった異変じゃないか・・・・麗の巫女は何をやっているんだ・・・・」

藍は頭を抱えて踊るようにくねくね悶えた。

「被害者は神奈子様を信仰していた信者達ですね。どうも神奈子様を信仰することに疑問を抱いたようで反逆を起こしました。生き残った信者の言い分を私が聞いて見たのですが、意味不明でした。なかった事実を掲げて騒いでいるだけのようです。誰が何を吹き込んだのか知りませんが、神奈子様は大層お怒りになって、山を消し飛ばしました。信者以外の山に住んでいた人妖達は、私が事前に呼びかけていたので無事に逃げおおせました。文さんが頑張ったようです。神奈子様の御力があれば山を元に戻す事も可能なのですが、神奈子様、完全にへそを曲げておられまして。私の信者としての信仰をも疑うようになりました」

「なんで君はそんなに冷静なんだ・・・・」

「すいません、性格です」

「ところで、守屋の神は二人いただろう?諏訪の方のはどうなったんだ?」

「どっかいきました」

「はい?」

「諏訪子様は神奈子様が攻撃を始める際に行方をくらましました。『まぁその内戻ってくるゲロ』とかふざけていやがりましたんで、心配はしてませんが」

藍は何処か吹っ切れたように、笑い出して、やっぱり考え込んだ。

「とりあえずその信者とやらを連れて来てくれ。紫様に何かわからないか聞いて見る」

「わかりました」

「それと、君はこれからどうするんだ?」

「どうもしませんよ。神奈子様がヘソを曲げるなんて良くある事です。今回は規模が大きいだけ。信者の生き残りを全部連れてきたら、神奈子様にお茶でも出しに行きます」

「・・・・君はいいお嫁さんになれると思うよ」

と、藍は苦笑いした。

ああ、人間は一体どんな人生を送ればあんな風になるんだろうとか、ああ、あの人間にこれからどんな人生を歩ませれば可愛げのある子になってくれるんだろうとかそんな事を考えながらの苦笑いだった。

どういう手際のよさか大量のふんじばった元・神奈子信者達が八雲家に届いたのは早苗が去ってから数分後の事だった。