タイトル




ムラサくーん、ムラサくーん。

・・・・なぁに?

前から思ってたんだけど、いっつもその場所に居るよね。何で?

何で?って言われてもなぁ。私ここ好きだもん。命蓮寺の中で、人が少なくて、居心地がいいのってここぐらいだし。

ふーん?まぁ、何処に居ようと会いに行くだけだから構いやしないけどさ。

えー鬱陶しいなあ。好きにしてよ。

勝手にしますよー。ひひひひ。



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・・・・この状況は何だ。

天国か?

むしろ地獄か?

いやすごい。

やばい。

確かに間違いなく幸せなんだけど。

寝れない。



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その日、魂魄妖夢は落ち込んでいた。

なぜ落ち込んでいたのかといえば、紫の家で5人(妖夢幽々子紫藍橙)でトランプして惨敗した挙句、罰ゲームと称して一日敬語でうやうやしく話せと言われたからだ。

妖夢は普段、一人称が『俺』で幽々子の事を呼び捨てにし、ツッコミと言う名の飛び蹴りを食らわせるような人物であり、妖夢は物凄い負けず嫌いな人物だった。

妖夢はしばしば小学生のような理由(今日も橙と『大富豪で2上がりルールを適応するか否か』で決闘になり、なかなかゲームが始められなかった。ちなみに妖夢は『2上がりルールは無しに決まってると』主張し、橙は『2で上がれる訳がない、2で上がれば大貧民だ』と一歩も譲らず、結局紫が『ポーカーで良いよもう』と面倒くさがったので決闘はうやむやになった)で怒ったり泣いたりする人物であり、妖夢はこんなではあっても一応100年弱程度は生きている人物だった。

幽々子は大概放任主義で、妖夢が怒ったり泣いたりする原因に関してはまったく関与しない。

ただし、怒ったり泣いたりする事自体には反応するようで、何があったのかとは(本人が勝手に話し出したりしない限りは)聞かないのだが、怒っていれば宥めるし、泣いていれば慰める。

幽々子はどんな妖夢だろうと好きなので受け入れるが、一番好きな妖夢は楽しそうな妖夢なので、そうなるよう、それに即した行動をとる。

幽々子は気まぐれで、たまに妖夢の事をわざと落ち込ませて遊んだり、放っておいたりする。

今日は丁度、そんな日だった。

「幽々子様」

妖夢が部屋に入ってきた。

言葉遣いはともかく、ずかずかした態度はそのままである。

「今日の晩飯・・・・晩御飯は、どちらがよろしかったですか」

何か全体的に尊敬語がおかしい気がするが、そこは慣れていないので仕方ない。

というかそもそも慣れる必要がない。

今日限り聞くことの無い喋り方だから。

「そうねえ、妖夢の作るものなら何でも美味しいけれど、何かリクエストした方がいいなら、今日は味の濃い物を食べたいわ」

「・・・・、・・・・じゃあ、お味噌を使った物を作ります。何を作るかはお使いをしながら考える事にしますね」

妖夢はまず褒められた事が嬉しいといったような表情になり、

次に褒められた事が恥ずかしいといったような表情になり、

いかんいかん表情を読み取られるといったようなあせった顔をして真顔に戻ってそう言った。

妖夢は性格と言葉遣いはともかく、家事が好きだった。

妖夢はお辞儀をして部屋を出た。

「・・・・ああいう妖夢も新鮮で良いわねえ」

と、幽々子は大変ご満悦だった。



ところで、当の妖夢はと言うと当然、面白くなかった。

前述したとおり、妖夢は落ち込んでいる。

今日の晩御飯の汁物にわさびをたっぷりぶち込んでやろうかと一瞬考えた程で。

どうも妖夢は人とは少し落ち込み方が違うようだ。

「くそう、ありえねえ」

妖夢は悪態を付きつつ、八百屋のオジサンに今日は機嫌が悪いなと軽口を叩かれながら買い物を続けた。



今日は幽々子に近づいて欲しくなかった。

敬語で話すのが面倒くさいから。

しかし、さあもうすぐ就寝の時間だと幽々子の布団を敷いている処に幽々子が現れた。

「・・・・どうかされましたか、幽々子様」

「・・・・」

あからさまに機嫌が悪い、近づくなと言った態度の妖夢に幽々子はため息をつく。

「幽々子様?」

「もう、いつもどおりにしてもいいわあ」

「へ?」

幽々子は時計を指差して、日付が変わった事を告げた。

「さ、布団も用意してくれたことだし」

幽々子は布団に潜り込んだ。

「はぁ・・・・おやす、ぐぅえっ」

やれやれやっと終わったよと去ろうとする妖夢だが、幽々子が急に脚を掴むので転んでしまった。

「な、何しやがるテメ・・・・」

「一緒に寝ましょう」

「はぁ!?」

「ダメ?今日は幽々子淋しいなあー」

「ぐ・・・・」

自分は気を使われ、あやされているのだと気づいた妖夢は、諦めて幽々子と一緒に寝る事にした。



・・・・この状況は何だ。

天国か?

むしろ地獄か?

いやすごい。

やばい。

確かに間違いなく幸せなんだけど。

寝れない。

おかしい。

抱きしめてくる幽々子。

というかもう寝息をたてている幽々子。

確実に寝ている幽々子。

と、その横で思い切り抱きしめられている俺。

恥ずかしい。

寝れない。

でも、すごい心地はいい。

ずっとこうしていたい。

良い匂い。

ふわふわする。

じゃなくて。

ああもう。

本当になんだこの状況。

今日ゲームで負けた事とか橙と勝負が付かなかった事とか敬語使わされてフラストレーションが溜まってた事とかの優先順位がみるみるうちに「どうでもいいランク」にまで下がっていく。

なんだ。

ドウシロッテイウンデスカ?

ねれないし。

時々むにゃむにゃと声をだす幽々子の声がもうヤバい。

しょっちゅう寝息が耳に届くのもヤバイ。

抱きしめられて胸が当たっているのもやばい。

SAN値がごりごりと削れて行くのが分かる。

やめろやめろやめてくれ。

こんな状態で私は正気を保っていられるのか。

あぁ、なんか外が明るくなってきたな。

もう朝なのか?

結局一睡も出来てないじゃないか。

まぶしい。

急に明るくなりすぎじゃないか?

なんか変な音が聞こえ・・・・る・・・・






違う。




これ違うぞ。

というか、時間もまだ2時ちょいだ。

昼より明るい。

これはおかしい。

音も大きくなってきている。





「おい、幽々子、ちょっと起き・・・・」




めき。




「ろ」







ばきばきと音を立てて、じゅうじゅうと音を立てて、白玉楼は空から降ってきた強大な閃光によって跡形も無く吹き飛んだ。